LinuCの発足とIT資格の闇
以前の記事(LPICとLinuCってどっちを受験すれば良い?違いと問題について)で、今まで日本でLPICを展開して来たLPI-JapanがLPICの取り扱いを辞めて、LinuC一本でやっていくということをお話ししました。
LPI-JapanがLinuCを立ち上げた理由について、LPICの試験問題が不正に流出してしまっている現状では資格の価値が損なわれるため、防ぎたい思いがあると公式サイトに書いてありました。
私はその考え方に共感していますが、中にはLPICの試験を今後も受けるべきという考えの方もいます。理由としては、
「LinuCでは世界共通の資格にならないから、LPICの方が価値あるのでは?」
「LPI-JapanはLPI本部へのアクセスを遮断されたんでしょ?LPI-Japanが独断専行で派手にやりすぎたんじゃない?LPI-Japan、なんか嫌だな。」
といういうように、確かにそのように感じてLPICの方が価値ありと判断する人もいるかと思います。
しかし、私はいちエンジニアとして、LPI-Japan側の考えに立っていきます。
それはなぜなのか?
ここから先はIT資格の闇に迫る話になります・・・
ひどい状況にあるベンダー系資格がある
私はLPI-Japanの主張を聞いた時「他のIT資格も同じ状況にある」と感じました。
その理由を書いていきます。
過去の記事で異質な難しさを誇っているシスコ系の資格について解説しました。
ネットワーク系SEはCCNP必須?難易度と料金が高すぎる資格
私がCCNAを取得した時「これで少しはIT未経験でも良いプロジェクトを探せるはずだ」と感じ、やっとシステムエンジニアとしてスタートラインに立てたと喜んでいました。
そして、とあるプロジェクトの面談に行くこととなり、面接官にこう言われたのです。
面接官「CCNAを5ヶ月で取ったの?すごいね。これって普通に勉強して取れたの?」
私は一瞬固まりました。
”普通に”ってどういうことだ?
Ping-tとクラムメディアで勉強して望んだことは普通じゃない?とふと思いました。とっさにありふれたことを言いました。
わ「参考書やPing-tを中心に勉強して取得しました。」
面接官「そうですか。」
私はもう一回固まりました。
この時の面談は特に印象的で、後味が残る面談でした。
あとで感じたことですが、クラムメディアを使ったことが、つまり”普通”じゃないってことだということです。
ですが、CCNAの受験間近の私に取っては必要な”予想問題集”でした。
なぜならPing-Tでめちゃめちゃ勉強していた友人が不合格となった話を聞いたからです。
ですが、クラムメディアの予想問題集は、本番と良く似た内容の問題を提供している。
・・・ここまで話すと、もうお分かりだと思いますが、試験問題の不正流出はLPICに限った話ではないんじゃないか?という疑惑です。
CCNAをとる当時はそういう疑惑はそこまで気にしていませんでした。
ですが、私が会った面接官はおそらく知っていたのです。
「あの試験は、テキストだけで受かるのは無理でしょ。」と。
だから私に「普通に勉強して取れたの?」と意味深に問いかけてきたのでしょう。
それがどこまで本当なのかわかりません。
しかし、その疑惑が日本で広がっている以上、”的中しまくる予想問題集”らしいものがある資格は、資格をとったからといって”本当に能力があるか”を証明をしてくれなくなってしまいます。
ですので、私はLPI-Japanの姿勢には共感しているという思いなのです。
”資格は、知識の証明となるべきだ”という考えに。
LPI本部とLPI-Japanのコメントの食い違い
話をLPICに戻しまして、LinuCとの違いについて調べていた時、さらに興味深い記事がありました。
LPI-JapanとLPI本部の意見は食い違っている、ということ。
まずはLPI-Japanの主張から。
取り扱い停止の理由
1. LPICの試験問題は、インターネットで検索し第三者のサイトから購入ができてしまう状況になってしまいました。このような状況はLinux技術者認定資格としてのLPICの公正性・信頼性が毀損されている状態であると言え、この状況を解決するためにLPI-JapanはLPICの開発元であるLPI Inc.(本拠地:カナダ)に対して早急な試験問題の差し替えを含む改善依頼をしてまいりました。しかしながらLPI-Japanが期待するような迅速な対応が取られませんでした。
引用:LPIC取り扱い停止に関するお知らせ
https://lpicj.org/201808.html(外部リンク)
次に、LPI(Linux Professional Institute)本部代表のG・Matthew Rice氏コメントがありますので、こちらも見てみましょう。
G. Matthew Rice(G・マシュー・ライス)氏:
実は、LPI日本支部を立ち上げる準備は1年ほど前からしていました。その要因としては昨年、LPIの細則に変更が加えられたことが挙げられます。そして、新しい規則を適用するにあたって、早く動かなくてはいけない状況に至ったのです。加えられた変更とは、LPIの資格認定者がLPIのボードメンバーになれるようにしたことです。つまり、ボードメンバーを選ぶための投票ができるようになったのです。――日本で受けた資格認定者の管理はLPI本部で行っているのだと思いますが、そうであれば細則を変更したからといって、日本支部を立てなくても、LPI-Japanを通してやればよいのではないでしょうか?
G. Matthew Rice(G・マシュー・ライス)氏:
おっしゃるとおり資格認定者、つまりメンバーとの実質的なつながりは、基本的にLPI本部が管理しています。世界の各地域にあるパートナー(LPI-Japanなど)や支部が助けてくれはしますが、基本的なサービスは本部から行っています。これはどこの地域でも同じ仕組みです。
なぜ、このタイミングで日本支部を立ち上げたかということなのですが、LPI-JapanがLPIの支部となってくれることに関心を持っているならばそれでよかったのです。しかし、相談したところ関心がないことがわかりました。それでは新しい細則を展開するにあたり、自分たちでやるしかない。そうしてLPI日本支部を設立しようという流れになったのです。
引用:本部代表が語るLPI日本支部設立の理由と、LPICの国内展開やLinuCとの関係
https://itjinzai-lab.jp/article/detail/1156(外部リンク)
というように、両者の意見はかすりもしていません。
世界最大のLinux技術者認定資格を展開するLPIがまさか「LPICの試験問題に良く似た問題集が流出している。」ことを認知していないわけがありませんよね。
それを解決した方が良いのでは?と提言したLPI-Japanの主張に対して、「細則を変更したのです。LPI-JapanはLPIの支部となってくれることに関心を持っているならばそれでよかったのです。しかし、相談したところ関心がないことがわかりました。」
・・・ん?
ひょっとしてLPICの問題流出を認知していない?
そんなことありえないですよね?
このまま対策を取らないままLPIC続行?
それもありえないですよね・・・
全てのIT資格が、本来の意義”知識の証明”となることを願っています。